SDGsに取り組む自治体が増えていますが、国と自治体との違いを考えて取り組むテーマを整理すれば、「社会」つまり地域創生こそが自治体にとって最重要SDGsテーマであると思います。

地方自治体のSDGsの最優先課題は「地域社会の持続性」

貴重生物のコアラが山火事から逃げそびれているのを映像で見て、大変だと思った人も多いでしょう。しかしよく考えればそれは、あなたの街から地域の個性的なお店や会社が廃業や倒産しているのと似ていませんか? 問題の元が繋がっています。

SDGsの大きなテーマは、E・S・G:環境、社会、ガバナンスです。

いまSDGsというと「E:環境」と人権など「G:ガバナンス」の話題が多いですが、それはEとGは目標やルールが明確で大企業や国が合理的に取り組みやすい課題だからです。

しかし、どれだけ新技術や組織的効率化によって「環境とガバナンス」が守られても、それで地域の多様な個性が消滅していたら意味が無いと思いませんか。野生動物を保護して人が育て続けるようなものです。

 

「S:Social=社会」とはつまり「地域社会」のこと。「社会の幸福ゴール」はベクトルが1つの方向ではありません。幸せは多様であって地域ごとに違った答えがあるはずです。なので、国も大企業も取組みにくい。

だからこそ、地方自治体は自ら「地域の多様性」を守り助長するのに力を入れるべきではないでしょうか。それぞれ異なる多様な生物が生きる森が世界に残った方が良いように、地域の個性の集合こそが世界全体の豊かな幸福感につながることを信じて。

バック・トゥー・ザ・フューチャー!

ここで逆に、昔に旅してみましょう。一体いつからどうして、地方の個性が危機に瀕する状況が始まったのでしょうか? おそらくそれは、明治維新でしょう。

それぞれ独立した「国」だったのが、明治以降は一つの国にまとまり中央と地方になります。政治、経済、文化・・・中央に情報も人材も集中する必要がありました。なぜなら、産業革命で始まった世界の規模拡大のスピードに負けないために。

それがいま、潮目を反転しつつある。各地域毎によりローカルな個性を取り戻すべき時代へ。

 

しかし実際には、「スピードと規模拡大の競争」は現代も激しさを増しています。過剰競争が環境破壊と貧富格差、異常気象やテロを起こし、このまま進むのは無理だと『SDGs』が提唱されたにもかかわらず・・・。

実はいまSDGsが盛り上がる大きな理由は過剰競争への反省ではありません。新時代への移行はリスクと同時にチャンスという考え方です。SDGsの問題の原因を作った先進国と巨大企業が、来たるべき新時代変革への巨大市場を狙ってまた競争を激化させつつあるのが現実です。そして確かに、新技術で解決される「環境」や「人権」なども多いにあるでしょうから、その動きは間違っているわけではありません。

「地域の個性」を推進するのは、地方・地域で行うしかないというだけです。

規模拡大を目指す価値観ではなく、
地域の産業の「個性」を育てる発想

地域の価値は「地域の個性」にこそあります。地域の産業を経済効率だけではなく、「個性」の面で育てることが、地域の持続可能な未来をつくるのではないでしょうか。

売上規模は小さくとも、それぞれが地域の看板になる個性的で魅力的な仕事をする人を意図的に増やしていくこと。1万人を雇用する企業を誘致するよりも、それぞれ5人10人の個性的なお店や会社をたくさん誕生させ、そのくらいなら私にもできる、自分もやりたい…と思う人を育て、さらに次の小さな起業の波を起こし続けること。

地方自治体の皆様には、自分はこの街で「ローカルでインディなビジネス(LIB)」をしたいという小さな夢を持った人を応援していただきたいと思います。

具体的には何からすればいいのか? まずは、我々のLIB LABにぜひご参加ください。

SDGsが推進する「新時代」の中で、AIやICTの技術ベンチャー企業や巨大資本の多国籍企業と同様に、LIBという泥臭くアナログな生き方を志向する人たちがひとつの重要な役割を担うことが、だんだんくっきりしてくることと思います。