LIB Lab主幹研究員、トミタプロデュース株式会社の富田剛史です。

バタバタしておりすっかり報告が遅くなりましたが、LIB Lab×ママ大校友会GOALsで実施した15日間の実験的な試み「StationLapis」で感じられたこと、のちに振り返った時に貴重な備忘録となると思うので書き留めておきます。

 

■Station Lapis実施概要

4/22(世界アースデイ)〜5/6(当初の緊急事態宣言期間の最終日)の15日間、ステイホームが徹底浸透する中で、毎日同じ時間に何かしらテーマを持ったコンテンツをzoomで発信し続ける

  • 朝9時〜 ラジオ体操〜オンライン講座の練習
  • 午前10時半〜 「メディア化ゼミ」メディアノウハウや機材やソフトの使い方を探求
  • 午後3時〜「心と身体のリラックス」ストレッチやヨガ、歌やダンス、同時異地点散歩など
  • 夜8時〜 トークセッション、ラジオ的雑談番組、オンラインスナック〜カラオケ実験など

全体を通じて「Station Lapis」と銘打たれたその時間は、放送局のような、イベントのような、ミーティングのような、合宿のような不思議な時間であり、はじまってしまった未来を楽しむための実験でした。

幸福学の前野先生ご夫妻、共感資本主義を目指すeumoの新井社長、日本ママ起業家大学近藤学長、LIB Lab/トミタプロデュース富田でセッションした「お金と幸福の未来」

急ごしらえでしたが、「バラエティに飛んだテーマ」でのコンテンツ発信を「定期的」に、「ある程度の期間」に渡り発信し続けたことは、次への仮説を得る手がかりにはなりました。

 

オンラインLIVEはリアル対面の代替にあらず

我々ばかりではなく、日本全国(いえ世界中)で、会議に飲み会、セミナー、ワークショップ・・・この2ヶ月ほどで皆さん様々なことをオンライン体験していることでしょう。

そして多くの人は、こういってます。

・オンラインの手軽さや便利さは間違いなくある
・しかし、リアルな対面で得られる「身体感覚」は得られない
・人は生身の身体感覚で生きるのだからオンラインは不完全だ
・早く元のように人と接したい

あなたはどう思いますか?

富田の感想は・・・「それは一種の固定観念ではないか」

たしかに、僕もオンラインは不完全だと思います。
しかし、よく考えれば「生身の身体感覚」も不完全です。

改めて、「生対面もメディアコミュニケーションのひとつではないか」と思いました。
うまく伝わるか分かりませんが、人の心が望む自由さに比べて生身の体というメディアは極めて不完全なのです。そして、その不完全性はダメなことではなく、楽しいことだなぁという感じ。分かるかなぁ〜・・・
(・・・まぁその話は少しヤヤコシイのでまた別の機会に詳しくお話します)

とにかく、2020年の春、コロナウイルスによって『オンラインLIVE』という“パンドラの箱”が世界中で開いたことは、人類の歴史でも特筆される出来事かもしれません。大げさかもしれませんが、メディア論からするとこれはそのくらい大きな変化です。

 

“ならではの表現”が出てこないと評価できない

新しいメディアが普及するには、「そのメディアならではの表現」の開発が絶対条件です。
送り手も受け手もそれに慣れるまでは、「あんなものではぜんぜん伝わらない」というものなのです。

いくつか例をあげましょう。

映像のカメラができた時に、最初に撮られた「作品」らしきものご存知ですか?

それは、「機関車が迫ってくる映像」でした。

映像を初めて見た人には、もうそれだけで大迫力だし思わず逃げた。。

でも、すぐにそんなことには飽きますよね。
そして、「本物に比べたらどうのこうの・・・」となる。

しかし、そこに
・数台のカメラを使い、寄りや引きのいろいろな画角の映像を切り替える
・走る汽車の映像の途中に「驚く人のアップ」や「線路から動けない老人」をインサートする
・ただの映像ではなく、登場する人物の名前や関係性、性質なども伝え「物語」にしていく
・途中でセリフが文字インサートされる
・バックで音楽を流す

といったことが出てくると、それは「映画」という新しい表現になっていきます。

遠くから近づいてくる汽車の映像というレベルとはまったく違う「別の魅力」が出てきますよね?
「映画の感動」と「実際の汽車の迫力」とを比較しても意味がありません。

 

皆が新時代をハッキリ認識する日はすぐそこ…
残された僅かな時代の移行期に何をするか

例えば、「書物」にしても同じこと。
太古の昔、多くの人が文字を理解せず、誰かの素晴らしい知恵や、歴史の変容などがすべて「口頭」で伝えられていた頃を想像してみてください。そこに、活版印刷が発明されて、多くの人にとって「書物」が身近になっていった時代を想像してください。

文を書くのも読むのも慣れてなかった昔の人は
「こんな面倒なことして言いたいことを伝えるなんてナンセンスだ!」
と思ったことでしょう。
「直接いう方がずっと早いし、ずっと伝わるのに、なんでわざわざ書物なんかにして印刷するのか?」
と文句をいっていたかもしれません。

しかし、今の我々は誰しも本の良さを知っています。
「講演会」と「本」と比べて優劣を語る人なんていませんよね?

 

まぁそんなものだということです。

つまり、今のオンラインLIVEもまだ始まったばかりということ。

新しいメディアならではの表現も未開発だし、その表現にココロ動かす経験も当然受け手に希薄だということです。
また、メディア自体も不完全で、まだまだ変わっていくに違いありません。

ですが・・・

あっという間にいろんな面白いコンテンツが出てくるでしょう。
それを体験した人が、また刺激を受けて、別の新しい表現をするでしょう。
人気者が登場し、これは商売になると思った企業が続々と参入し、臨界点を超えるでしょう。

そしてオンラインの面白さを世のほとんどの人が当たり前に思い、
「直に会うのと、オンラインでつながるのと、どっちがいい悪いなんて言えないよね〜」と
さも当たり前のように言うようになるでしょう。気づけば時代がすっかり変わっている。

少し前まで「今は幕末です」といってきましたが、もはや「明治維新は起きました」です。
ただ、みんなが江戸時代までと違うとハッキリ分かるまでにはあと数年あるという段階。

 

オンラインLIVEならではの表現は?

では、オンラインLIVEならではの表現ってどんなのか?・・・それはまだ確定していません。それこそ、いま最もアンテナを敏感にし、想像力を働かせ、創造性を発揮して感じるべきことではないでしょうか。

私自身も、今回の15日間のStation Lapisで、大人も子どもも男もオンナも東京も地方も・・・参加してくれた皆さんとともにいろいろと試しました。なかなか面白かった。

そして感じた「こんな風に使うと面白いかもね」をコンテンツの形にして出していきたいと思います。
今月もいくつかありますので、良かったらぜひ参加して、体感してみてください。

新たなメディアの特性の面白さを感じ、そこにどんな工夫を施したかを想像していただけたら嬉しいです。その感想を互いにシェアしあうことで新しい時代のツールが徐々に形になっていくことでしょう。

 

その1:小河知夏劇場のオンライン「語り劇」公演

5月9日にオンライン上演した「走れメロス」を30日に再演します。「語り劇」自体、新ジャンルのエンタメとして創作しているものですが、それをオンラインならではの表現・演出方法も意識して作品化している例です。前回公演ではご覧になった方の多くが画面を前に涙腺をゆるめ、リアルな会場で見るのとはまったく違う良さがあった!と語っています。それはいったい何なのか・・・ぜひご自身で感じてみてください。

5/31(土)15:00開演 小河知夏劇場 走れメロス

https://ogawa-chinatsu.com/event-info/548/

 

その2:オンライン関門時間旅行【平家物語をめぐる旅】

「旅」の感動はオンラインでどこまで伝わるのか? 5月2日にテスト実施したオンラインツアーを、かなり改善を加えて5月31日に再度実施します。関門時間旅行は元々「ある時代への想像旅行」がテーマでその点オンラインコンテンツ向きですが、今回は「現場と生で繋がる旅感覚」をどれだけミックスし、「リアル旅」との融合が楽しめるかを探ります。リアルとオンラインの融合は、いろいろな業種の方にも参考になると思いますので、よかったらぜひご参加ください。

【6/14に延期】オンライン関門時間旅行『平家物語をめぐる旅』:追加希望を若干名受付けます | 関門時間旅行

本イベントは北九州市での感染拡大を鑑み、6/14(日)に延期と致します。状況によって再延期もあり得ます。ご了承ください。5/2に実施した「オンライン関門時間旅行」は、お…

ご参加お待ちしております!