LIB LAB 主幹研究員、トミタプロデュース株式会社の富田剛史です。

わかったようで分からない…という人が多いSDGs(エスディージーズ)。多くは「地球にやさしい活動とか国際貢献のことでしょ」と思っているわけですが、それはSDGsのごく一部を一方から捉えたもの。
「じゃあ何よ?」というあなたのために、なるべく分かりやすくSDGsの本質を考えてみます。

SDGsを分かりやすい日本語でいうと何か?

結論からいえば、SDGsを「新時代」という言葉に一括変換してみると意味がくっきりしてきます

正確にいえば「来たるべき時代」の方がニュアンスを表していますが、長いので「新時代」に”来たるべき”という意味を込めてカギカッコ付にしてもらえれば、だいたいスッキリすると思います。例えばこの首相演説あたりを見てみてください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000520099.pdf

例えば「SDGsを原動力とした地方創生を推進する…」というフレーズ、SDGsを知らない人には呪文のようですが「”新時代”を原動力とした地方創生を推進する…」だと少し意味がわかり始めますよね?

え?まだ分かるような分からないような…ですか? なるほど、もちろん多少「解釈力」は必要でして、そのためには「新時代」とは何かをイメージする必要があります。

 

一応、一般的なSDGsの説明も抑えておきましょう

さて、SDGsを知らない人に冒頭の説明はいかにも不親切なので、一応教科書どおりの説明もしておきましょう。

SDGsとはSustainable Development Goals の略で、一般的な直訳では「持続可能な開発目標」です。具体的には、国連が2015年に17の目標を169の「ターゲット」といわれる細分化指針とともに定めたもので、2030年までに世界がこの目標のクリアを目指しています。

17の目標を言葉でいえば次のようになります。

貧困や飢餓の撲滅、保健・衛生や教育、ジェンダー平等などをすべての国に行き渡らせ、働きがいも経済成長も地域社会も大事にしながら、地球環境にもインパクトを与えず持続可能な成長をしていく。

人によっては「そんなのキレイゴトでしょ」と思うかもしれませんが、そうも言っていられなくなったのが現代です。その理由は主に以下にあります。

  1. 地球温暖化/異常気象が産業界も看過できぬほど深刻化していること
  2. 豊かさ=モノ所有のだった価値観が多くの国で変化してきたこと
  3. テクノロジーの進化によって昔ならできないことができるようになったこと
  4. 情報流通メディアの主役がマスからインターネットに変わったこと

 

ひとつひとつ詳しくは書きませんが、上記は強烈な時代の変化です。20世紀に世界市場を席巻した巨大企業であっても3つのリスクを感じることになります。それは・・・

  1. 気候変動リスク
  2. 低炭素型社会への移行リスク
  3. 情報統制とブランド維持リスク

1の気候変動リスク。これ以上気候変動が酷くなれば、生産も流通も今まで通りにはできなくなります。気候変動は企業活動を続ける上でも何としても止めねばなりません。

2の時代の移行リスク。昔とは価値観が違う消費者が増え、技術によってシェアリングエコノミーなどが進展すれば、これまでのように大量生産・大量流通・大量消費を前提にした企業運営では立ち行かなくなります。

3の情報統制でも、昔ならマスコミ人の数は圧倒的に少なく、不祥事でも力のある人なら世に出る前にもみ消すこともできました。しかし今はすべての人が発信者。企業も国家も、ガバナンスを遵守し本当に善き行いをすることこそがブランド維持の唯一の方法です。

経営者も先進国政府も「困ったものだ。これでは経済成長にブレーキがかかる」とはじめは考えますが、そこでハタと気が付きます。「いや、新時代への移行はリスクであると同時に巨大市場ができる大チャンスなのではないか」と。

それでSDGsが「攻めの社会貢献」「儲かる社会貢献」と呼ばれるようになり、大小関わらずあらゆる企業がこのチャンスに乗り遅れるなと必死になりはじめた・・・というのが現在です。

 

つまり、多くの企業にとってSDGsは今のところ「儲かりそうだから真剣に取り組む」というこれまでのスキームの延長線上にあるブームです。しかし、たとえ入口はどこからであっても、結局はどんどん「あるべき姿」に向かうしかないのがSDGsだという気がしています。なぜか? 何しろSDGsは「新時代」なのですから。ノアの方舟に乗らない選択は「おしまい」を意味しています。

 

「新時代」のイメージを明確に持つ

「新時代」から、我々がこれまで生きてきた「旧時代」を眺めてみればよく分かるでしょう

  • 「旧時代」は、産業革命〜21世紀初頭までの大量生産、大量消費、大量廃棄の時代です
  • 「旧時代」は、石炭〜石油〜原子力と、化石燃料から核燃料までエネルギーを使いまくった時代です
  • 「旧時代」は、モノの所有が豊かさで、貯める→ 増やす→ 嬉しいでした
  • 「旧時代」は、みんなが同じメディアを見て、有名スターを使ったCMで物が売れました

 

SDGsをこれまでの価値観の延長線上で考えて活動する人も多いのですが、過渡期にはそれも必要ではあるものの、やはり本質的には変わらざるを得ないことでしょう。

具体例でいえば、「大量に廃棄される何かをリサイクルやリユースによって別の何かに製品化する」といったことです。リユース技術やスキームの開発はもちろん歓迎すべきですが、そもそもの大量廃棄が出ない手を打つことが必要です。

 

なぜ大量に廃棄物が出るのか? 先に大量に作るからです。
そして、大量にさばくために、全国チェーンの凄まじい店舗数の店に流通させ、棚に並べ、有名スターのCMで大量に宣伝し、それでも余れば大量に廃棄する。そうやって旧時代の経済は発展してきました。

 

しかし今は、AIの発展や輸送システム・生産システムの発展によって、高精度で「予想」することや、「予約後に生産」ということが出来るようになってきました。こちらが新時代です。

 

その「新時代」になってしまうと旧時代に当たり前にあったものが必要なくなったりもします。

スーパーマーケットという業態がそのまま続くでしょうか。
テレビCMにタレント、過剰包装と派手なデザインのパッケージ、単純な廃棄処理・・・などはどうでしょう。

全部が急に変わるとは思いませんが、方向としては先に大量に作ったものを広告やセールスでガンガン売る形から、人々が欲しい物やしたいことを先に自ら感じ、考え、予約や注文をして必要なものを作り、必要なだけ手に入れる方向が「新時代」でしょう。そして、手に入れたものは修理しながら大事に長く使う。

「モノの生産が減るじゃないか!」と思うかもしれませんが・・・その通りです。モノではない、経験や学習、デジタルコンテンツなどにシフトするのではないでしょうか。

 

「新時代」は前提!今とのギャップで必要な役割を見つける

「果たしてそうなるのか?」「今の◎◎◎を考えると、そんなの遠い遠い先の話じゃないか」などと悩む時間はモッタイナイです。10年前のことを思い出せますか? さらにもう少し前も思い出してみてください。今の変化が予想できましたか?

今後はますます変化のスピードは上がります。AIやロボット、ドローンなどの技術の変化も、Z世代と呼ばれるソーシャルネイティブな人たちの社会進出もこの10年でものすごい勢いで来ることでしょう。

インバウンドなんてことむかし言ってたね〜と外国人の旅行者も居住者も当たり前になり、それよりも彼らこそが「日本人」になって私達の子供や孫と社会を一緒に築いているはずです。言葉の壁も文化の壁も、技術の変化とコミュニケーションと教育の変化で乗り越えているに違いありません。

 

日本でいうと平成時代までの変化は「21世紀の序の口」で、世界はこの先10年の「2020年代」にガラッとひっくり返ることでしょう。大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄の経済や、エネルギー消費の方法がすっかり見直された「新時代」が来るしか人類に選択肢はありません。

しかしそのために必要なこと、変わらねばならないことがたくさんありますよね?

 

ここで冒頭の「SDGsを原動力とした地方創生を推進する…」を再び考えてみましょう。

SDGsを「新時代」と読み替えるなら、「”新時代”を原動力とした地方創生を推進する…」です。その意味は、大量生産・大量消費・大量廃棄型ではない新しい経済の在り方や、その地の他とは違う個性を愛する世界のどこかにいる誰か、ソーシャルネイティブでICTは当たり前な大人たちが育てるさらに次の世代の「地球人」が生きる時代・・・その時代の変化を原動力にした地方創生を推進する、ということではないでしょうか。

なかなかに面白い時代がやってきそうではありませんか。LIB LABで一緒に研究してみませんか。